カイロこまば通信 第20回
【2007.08.27 発行】
テーマ:久しぶりの運動…筋肉痛が気になりますよね
「週末に久しぶりに運動をしたら次の日に筋肉痛が…」、よく聞く話ですよね。普段運動していない人にとっては翌日や翌々日に出ると運動不足の象徴のように語られる筋肉痛…今回はその遅発性筋肉痛のメカニズムに関してお話して行きます(RMIT大学日本校の講義中に客員講師である千葉大学助教授の先生から伺った内容をもとにまとめています)。
では筋肉痛はどのような運動で起きるのでしょうか。
これは等尺性筋収縮(筋肉は収縮しているが外力と等しいため長さが変わらない状態)、短縮性筋収縮(筋肉が縮みながら力を発揮する状態)、伸張性筋収縮(外力が強く、筋は引き伸ばされながら力を発揮している状態)を行わせた後の遅発性筋肉痛の発現経過を調べた調査によって明らかになっているのですが、等尺性筋収縮や短縮性筋収縮では遅発性筋肉痛は生じていないのです(よく乳酸が筋肉痛の原因と言われますが、等尺性筋収縮でも短縮性筋収縮でも乳酸は出ています…そうすると??ですよね…)。
伸張性筋収縮の時、つまり筋肉痛は次のような状態の時に起きているのです。
- 発揮筋力より負荷が大きい場合。
- 筋疲労により発揮筋力が負荷よりも小さくなった場合。
- 筋力発揮と外力がかかるタイミングが崩れた場合。
例えば、腕相撲で負けている場面やダンベルを持って関節を伸ばしている時をイメージしてください。大きな負荷がかかると筋肉の線維(線維といっても細胞です…)は壊れます。すると、筋肉の収縮・弛緩に関わるカルシウムイオン濃度が細胞内で高まり、タンパク質分解酵素が活性化され、炎症反応が生じます。これが、痛みの原因と考えられるのです(炎症反応は治癒のための過程ですから、運動時ではなく遅れて痛みが出てくるのです…)。
ただ、炎症反応が全ての原因と言えない点もあります。というのは、筋肉痛のピークは運動の2~3日後なのですが、MRIでの観察では炎症反応の広がりは伸張性収縮運動の6~10日後に最も激しいというデータがあるからです。
先生曰く、この原因はまだ分かっていないということでしたが、「筋肉痛には記憶効果がある」とおっしゃられていました。痛みの程度、筋肉の損傷を示す酵素量、MRIによる炎症反応は経験により軽減されるそうです。そうすると、筋肉を鍛えることで筋肉痛が出なくなるというよりも、定期的に同程度の負荷で同じ運動を繰り返す(つまり同じ筋肉痛をいつも出す…)ことで痛みの記憶を作り上げ、それをキープすることこそが筋肉痛を出さなくする方法というところでしょうか(痛みを出して痛みを制御するということ??…複雑ですね…)。
このお話にカイロプラクティックの視点を加えていきたいのですが、スペースの関係上、今回はここまでと致します(またシリーズものになってしまいました…)。次号では「神経的に抑制された筋肉で昔と同じような運動をしても筋肉痛が起こりやすいだけですよね…」、とか「筋トレをしても鍛えたい筋肉が神経的に抑制されていては…」といった内容をお話しして行きます。お楽しみに。
※バックナンバー一覧はこちら↓