カイロこまば通信 第36回
【2008.4.28 発行】
テーマ:朝はとにかく注意です…
魔女の一撃と言われるぎっくり腰は、急な外力が想定外の方向からかかることで腰部の安定化作用が働けず、筋挫傷や関節周囲組織の損傷が引き起こされた結果です。
ただ、急な外力といっても必ずしも強い力とは限りません。来院された患者さんに話を伺っても、ちょっとした屈む動作でぎっくり腰になった方も多いです。蓄積された筋疲労が限界を超えてという場合もありますし、腰部の安定化に関わる主動筋と拮抗筋のアンバランスからくる機能的な問題も疑われます。
とはいえ、普段であれば問題なく出来た動作が今回は引き鉄に…ということを考えると、その時の状況という側面も無視できません。腰部の安定化作用が普段以上に働けない状況に陥っていたとしたら、リスクは数倍に高まっているはずです。
ではどういう時に腰部の安定化作用が働けなくなるのでしょう。
ぎっくり腰を繰り返している方は機能的な問題の存在が疑われるので普段から不安定な状態になっていると考えた方が良いのですが、それ以外に(それと組み合わせて…)次の時間帯は要注意です。
- 起床後しばらく(30分ほどは要注意!)
- 長時間(最大に屈めていたらすぐ…)座っていた後しばらく
どちらも椎間板の高さが縮むことで靭帯を含めた周囲の組織の剛性が失われるタイミングです。
起床後は、寝ている時に水分や栄養分を再吸収して本来の高さに戻った椎間板が重力の影響で圧縮され始めるタイミングです。座るといった腰を屈める動作も背骨の前側に位置する椎間板に圧縮力が加わっています(長時間の運転後も要注意!)。椎間板高減少に伴って周囲の組織に生じた歪みや捻じれは、椎間板にかかる負荷を軽減してもしばらく続きます。荷重を分散させるクッションの働きをしている椎間板自体が不安定な状態になるのですから、ちょっとした負荷でも損傷が生じるのです。
朝、靴下を履こうとしてぎっくり腰…よくあるケースです。これじゃ避けようがないじゃない…と思われるかもしれませんが、筋疲労や機能的な問題が絡んできた時に起きると考えると、腰部の筋疲労が寝ても抜けないなあ…と感じている時の朝こそ注意すべきです(前日に普段以上に重いものを持ったとか、長く座っていた、ハードな運動をした場合なども…)。腰を丸めて靴下を履くのではなく、股関節から曲げることで腰をなるべく屈めない姿勢をとるとか、足を反対の膝上に乗せて履くというように予防の観点から方法を変えてみてはいかがでしょうか。
もちろん靴下を履く時だけではありません。とにかく危険な時間帯は腰を最大限に屈めるような動作は避けましょう(ぎっくり腰の経験がある方はもちろん、未経験の方も気をつけましょう…椎間板は加齢とともに徐々に変化してくるものです…)。注意していればすべて防げる訳ではないですが、日常生活に混乱を引き起こさないためにも、気にされてみては如何でしょうか。
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