カイロこまば通信 第58回
【2009.11.24 発行】
テーマ:身体を前屈すると、ううっ硬い…
今回は膝を伸ばした状態から身体を前屈させた時のお話です(身体が硬い方にとってこの動作は悲しくなりますよね…)。
前屈させた時に張ってくるのが太ももや膝の裏側…ハムストリングスという筋肉です(股関節を支点に脚を後ろに引く作用と膝関節を曲げる作用をあわせ持ちます…)。詳しくは外側(大腿二頭筋)と内側(半腱様筋・半膜様筋)とに分かれ、前者は骨盤(坐骨)と大腿骨から膝下の腓骨に、後者は骨盤(坐骨)から同じく膝下の脛骨につながっています。立っている状態では脚側の付着部が固定されるため骨盤が可動部となって骨盤を後傾させる働きがあり、この作用から姿勢維持筋にも括られます。
ではこのハムストリングスが短縮したらどうなるでしょう…。短縮は物理的に長さが短くなった状態(筋肉は普段から伸ばしたりよく動かしておかないと、日常生活に必要な長さで適応してしまいます…)で、筋肉を伸ばそうとしても筋膜(硬い結合組織…)が伸張できず柔軟性がありません。前屈で考えると、骨盤が前傾できずにロックして股関節から曲がることを阻害し、無理に曲げようとすると脚側の付着部が引っ張られて膝が曲がってしまうのです。
次に、このような方が背負い込んでいるリスクをご紹介します。床に手がつかない方が反動をつけながら無理に前屈すると、ハムストリングスの筋腱移行部や骨の付着部が損傷するかもしれません(過度に行えば肉離れにも…特に他の人が無理に力を加えたときが危険です…)。また、ハムストリングの働きが強すぎると脚を後ろに引く作用の主動作筋である大殿筋(お尻にある筋肉です…)の萎縮につながります(筋肉の連動性を狂わせ、姿勢や動作に影響が…)。更に、股関節から曲がらないと代償的に背骨(椎骨)を過剰に曲げようとするため、背骨の前側にある椎間板に過度の圧縮荷重がかかったり(椎間板が痛んでいる方はヘルニアのリスクも…)、後側にある筋肉や結合組織を過度に伸張したり(先ほどのハムストリングスの様に損傷も…)します。背骨各分節の可動性が正常で上手く負荷分散できれば良いのですが、仮に第4・第5腰椎間の可動性が低下しているとすると、その上下(第3・第4腰椎間や第5腰椎/仙骨間…)が必要以上に動きすぎてしまうことになるのです(損傷リスク↑…)。
カイロプラクティックは、それら可動性が低下した関節の働きを回復させ、連動性を高めることを目指します。過緊張したハムストリングスの柔軟性を取り戻すため、弱化している拮抗筋を働かせたり、筋紡錘を刺激したりもします。ただ、筋肉が短縮してしまっていると簡単ではありません。短縮している場合は物理的に伸ばさなければなりませんから、日常のストレッチこそが解決手段とも言えるのです(普段からストレッチしておけば、この問題からくる腰痛を避けられるということでもあります)。
前屈制限のある方すべてにストレッチが必要という訳ではありません。
ただ、ぎっくり腰を繰り返している…、仕事がら前屈することが多い…という方は症状改善や再発予防のためにストレッチが必要かもしれません。もちろん、別の問題も考えられますし、無理にストレッチして逆効果になることもあります。急性腰痛の最中にこの筋肉をストレッチすると症状が悪化することもあるのです(不安定になって…)。ただ、症状が安定しているのであれば、反動をつけないよう注意しながら無理せずストレッチしてあげることは身体のために良いことです。特にお風呂に入って温まった後は効果的。気になる方はぜひお試しください。方法は…スペースの都合上またの機会にさせてください(インターネットで検索すると色々な方法が見つかりますので、興味のある方は調べてみてくださいね…)。
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