カイロこまば通信 第109回
【2014.2.24 発行】
テーマ:左右同時に血圧を測ることも…その理由は?
当院では、両腕同時に血圧を測ることがあるのですが、「何をされているのだろう…」と不思議に思われる方もいらっしゃいますので、その理由について紹介したいと思います(一般の病院では両側同時に測ることなんてないですよね…)。
この検査ですが、すべての患者さんに一律に測るものではなく、例えば強い痛みやしびれがある、立位の姿勢バランスが崩れている、自律神経に関わる徴候に偏りがあるといった点が複合しているような場合に行います。
まずは、血圧と自律神経の関わりを簡単に説明しておきたいと思います。自律神経は交感神経(闘争と逃走の神経と言われ、身体を活発に活動させる時に働きます…)と副交感神経(交感神経の逆の働きをしていて、身体がリラックスしている時に働きます…)に分かれますが、交感神経には血管収縮神経があり、それがほぼ全身の血管に分布しています。交感神経が優位になると、この神経の働きによって血管は収縮し、血圧が上昇します。ストレスや精神的・身体的トラウマといった要因でも交感神経は亢進しますので、現代の生活を考えると交感神経は亢進しやすく、血圧も上がりやすい状況にあると言えます。ただ、血圧の制御は神経系だけでなく、内分泌系や腎臓などの働きも関わっていますから、血圧が高いというだけで交感神経に問題があるということにはなりません。
ここまでの説明ですと、左右同時に血圧を測る理由はさっぱりわからないですよね。では、その目的が何かと言いますと、血圧を通して左右の自律神経の働きに有意な差がないかをチェックし、その先に脳や脳幹部の働きに左右の偏りがないかを探っているのです(神経のバランスが崩れた状態と言えますが、働き=機能としての差であって、病理的な問題を見据えている訳ではありません…)。
脳は神経機能のかたまりです。その神経機能を維持するには、神経ニューロンへの酸素や栄養だけでなく、適切な刺激が必要です。ただ、脳へ上る情報、脳から下行する情報が減少したり、左右差が生じることがあります(身体の使い方や、外傷、運動不足、更には食生活、ホルモンバランスなど色々な要因で…)。脳幹部は生命維持に関わる各種中枢が存在している部位なので、脳の機能の偏りが、例えば自律神経機能に影響すると言う様に、様々な問題を引き起こしかねません。そのような問題を引き起こす神経のアンバランスをチェックする方法の一つとして、この検査を使っているのです。もちろん、左右の血圧に有意な差が見られたからといって脳の働きに偏りがあると言い切れるものではありません。他の要因だって考えられます。脳の機能に偏りがありそうだと判断するにしても、自律神経だけでなく、脳神経や運動神経など様々な視点から検査を行って始めて、疑いが…というレベルなのです。
ちなみに、このような考えかたは機能神経学というカイロプラクティックにとっても新しく、今後更に進化して行くであろう分野で研究されているものです。もともとはカイロプラクティック神経学と言われていたのですが、カイロプラクティックが本来得意としていた末梢神経だけでなく、より上位の脳や脳幹部の機能に対してどのように働きかければ良い変化を引き起こすことができるかを追求するアプローチです。カイロプラクティックに限定されるものではなく、広く普及されるべきということもあって機能神経学と改められたそうです。
私自身は機能神経学を専門としている訳ではない(機能神経学のディプロマを有するカイロプラクターが日本にも出てきていますが、数名ほどだそうです…)のですが、今後のカイロプラクティックにとってキーワードになるアプローチでもありますし、当院で用いているAK(アプライド・キネシオロジー)を利用した機能神経学的アプローチも、本場アメリカで開発されていることもあり、注目しています。
機能神経学の話にずれてしまいましたが、この検査法は当院で重視している神経筋骨格のアンバランス、特に神経のアンバランスを探る方法の一つなのです。
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