カイロこまば通信 第121回
【2015.2.23 発行】
テーマ:目の疲れは全身に影響する…
よく目が疲れる…、視力が急に弱くなった…といった目に関するトラブルを感じることはありませんか?
本を読んだり、PCやスマホを使ったりと目を酷使することは多いので、眼精疲労と診断されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。「目が疲れたら、しっかりと目を休めましょう!」ということはもちろん必要なことですが、それは目の問題にとどまらないからこそとも言えるのです。今回のテーマは『目の疲れは全身に影響する…』です。
まず、目はどのように動いているのでしょうか。動かすといっても、眼球を色々な方向に動かす、瞼を開け閉めする、瞳孔を収縮・散大させるというように、色々な運動があります。それらに関わる筋肉があるのですが、その筋肉を制御しているのは脳神経であり、交感神経・副交感神経といった自律神経です(瞳孔の散大は交感神経が、収縮は副交感神経が働いています…)。
また、頭の動きを三半規管で感知して、それに応じて眼球を動かすといった反射も存在します。このように、神経系、特に脳との関わりが大きく、大脳皮質では前頭眼野といった領域が眼球の運動に関わっていますが、直接的に眼球や瞳孔の運動を制御しているのは、もっと中心部分の脳幹部(特に中脳…)や小脳、大脳基底核(大脳皮質と視床、脳幹とを結びつけている神経核の集合体…)なのです。
小脳については前にも書いていますが、特に前庭小脳という領域は眼球運動の調節や身体平衡に関わっています。大脳基底核は、大脳皮質からの大雑把な指令を視床や小脳、更には大脳と連絡をとりながら微調節して丁度良い具合に制御しています。中脳には様々な機能があるのですが、姿勢を制御する立ち直り反射や眼球運動(眼球を動かす動眼神経や滑車神経は中脳から伸びてきます…)、対光反射(網膜に光が当たると瞳孔が収縮する…)といった機能や、呼吸のコントロール、交感神経刺激、更には聴覚の中継点の役割も行っています。
このように、目の運動に関わる各種領域は、身体の運動や自律神経のコントロールにも関わる領域に隣接しています。そして、それらは相互に影響を受けているのです。例えば、物を目で追う動作(前庭小脳の機能…)が上手く出来なくなっていると、運動のプランニングやタイミング(大脳小脳の機能…)に影響が出ている可能性があるということにつながるのです。
ここからは特に中脳に注目したいのですが、目を酷使すると光が中脳を刺激します。そうすると、中脳が亢進したり、疲弊(中脳が働くためにはGABAなどが燃料となりますが、それらが不足することも中脳の疲弊につながります…)したりします。そうすると、光過敏や眼精疲労、視力低下といった症状に加え、もしかしたら不眠や耳鳴りといった問題が引き起こされるかもしれません。姿勢制御や顎関節・上肢屈筋群のコントロールもしているため、背中が丸まる姿勢や顎関節症、肩関節痛といった問題にも関わっているかもしれません。
もっというと、中脳が亢進すると交感神経を刺激しますから、自律神経失調に関わる各種トラブルが引き起こされている可能性もあるのです。ちなみに、中脳を刺激するものは光刺激だけではありません。音もまた中脳を刺激しますし、痛みや炎症、アレルギー反応、顎関節のトラブル(もしかしたら歯科治療でも…)といったものも同様です。
目を酷使した後は、目が痛い…、頭が疲れた…、頭痛が…といった分かりやすい症状が出ますが、実はそれだけではないということが分かって頂けたでしょうか。そう考えると、目を休ませることは、本当に大事です。特に、寝る前にはしっかりと目を休ませておく、つまりは中脳をクールダウンさせておくことが大切です(睡眠時は副交感神経が優位にならないといけないのですが、交感神経が亢進しているとそうならなくなってしまいます…)。そのためには、症状にもよりますが寝る前1時間はPCやスマホの画面を見ないようにすることは大事です。また、日中でも目が疲れたらアイマスクを使って15分でも目を休ませる、イヤホンやヘッドホンを使って大音量で音楽を聴くことは避けるといったことを心掛けましょう。
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