カイロこまば通信 第124回
【2015.5.25 発行】
テーマ:逆流性食道炎について…
今回は逆流性食道炎についてお話ししたいと思います。
というのは、先日この件でお問い合わせがあったのですが、お電話で上手く伝えることが出来なかったという反省を踏まえてです。逆流性食道炎はカイロ(といいますか、AK…)でもアプローチしますが、腹部へのマニピュレーションだけでなく、食生活へのアドバイスも必要となります。まずはポイントをご紹介します。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで、食道粘膜に炎症が生じて胸焼けといった典型的な症状が起きる疾患です。他にものどの違和感やお腹のはり、ゲップといった症状に加え、首や肩、腕、背中、顎といった広い範囲に放散痛を引き起こすことがあります。例えば、左肩や腕の痛みは心臓の問題からの放散痛が疑われる領域ですが、逆流性食道炎による放散痛である可能性も高いのです。もっというと、頭部から上肢にかけて(どちらかというと左側…)のよく分からない痛みやこりに関わっている可能性は高いと言えます。
逆流性食道炎と診断された場合は胃酸を抑える薬を処方されることが一般的ですが、食道に胃酸が逆流してしまう機能や構造の問題をどうにかすべきではないでしょうか(私達カイロプラクターはそのように考えます…)。大きくは、2点が問題となります。食道と胃との境目にある下部食道括約筋や横隔膜がしっかりと働けているかどうか(横隔裂孔ヘルニアといった問題が潜んでいる可能性も…)、胃腸の消化能力がしっかりとしているかです。
横隔裂孔ヘニルアは横隔膜にある裂孔を胃食道の結合部や胃底の一部が越えてしまうことですが、画像診断上そのようになっていなくてもAKでの検査でNGとなることはよくあります(機能としてのチェックのため…)。AKでの検査法ですが、胃と食道の移行部付近に頭方に押圧を加えて胃に関連する筋肉の筋力変化を探り、身体の反応をチェックします。NGの場合は、その部位にマニピュレーションを行い、機能性を向上させます。このマニピュレーションを行って、胸部がスッキリしたり、頭痛が楽になったりといったことはよくあります。また、横隔膜の機能を改善させることも大切ですが、そのためには、胸郭や腰椎の可動性を改善させる、腹部に圧がかかる屈んだ姿勢をとらない(特に食後…)といった点も重要です。
2点目の胃腸の消化能力に関しては、なぜ胃酸が逆流するのかというところに着目しなければなりません。胃酸自体は消化の上で欠くことができません。タンパク質分解酵素を活性化させる働きをしますし、殺菌作用もあります。また、胃酸は消化物と一緒に腸側に送られますが、そこで膵液や腸液で中和しています(この際、胃酸の分泌抑制も行われます…)。この作用が働かないと小腸内の消化酵素の活性が著しく阻害されるのです。ではなぜ、胃酸が逆流するのかですが、私達は胃腸の働きが低下しているため、胃の内容物を十二指腸側に送ることができず、腸内に内容物が残っていることで更に胃酸が分泌され、それが食道に上がってくると考えています。つまり、この問題を改善させるためには、その先の工程までを含めた消化機能全般を改善させて行くことが必要なのです。
消化機能全般を改善させるためにはどうするか…ですが、神経系としては迷走神経といった副交感神経が働かなければならず、逆に交感神経を抑える必要があります。自律神経の中枢は脳幹部に多く存在しますので、神経系のバランスを整えて行かなければなりません(バランス感覚を向上させることもその一歩…)。その他にも前にご紹介した回盲弁症候群を改善させたり、消化器官に関連する筋肉を活性させたり、そのために反射のポイントを刺激したりといったことも行います。食生活に関するアドバイスも大切です。
逆流性食道炎と診断されると胃酸過多として胃酸を抑える薬を処方されがちです。もちろん、実際に胃酸過多で薬が必要な方もいらっしゃいますが、そうでない方もいらっしゃいます。そのような方が薬に頼るのはどうでしょうか。年齢とともに胃酸分泌は低下する傾向にあるはずですから…。
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