症例のポイント:下肢痛は腰や骨盤が原因のこともありますが、まずは筋バランスをチェックしてみることが大切です。そうすると色々なことが分かってきます。
このような患者さんでした
50代男性。
症状
- 腰にここ何か月か常に鈍い痛みを感じる。朝にこわばりも。
- 何年かに一度のペースで、ぎっくり腰を繰り返している。
- 膝を曲げる時に左太腿裏側につっぱるような痛みが出る。
- 急に動いて踏み込んだ時などに両膝前面に痛みが出る。
- 同様のタイミングで、左足首にも痛みが出る。
経過
慢性症状のため、まずは姿勢や可動域の検査、筋力検査から問題を探って行きました。
立位での骨盤の傾き、腰から上体を回す動きでの左右差といった所見に加え、筋力検査では右腸腰筋、左大腿直筋、左大腿筋膜張筋、左縫工筋といった股関節や膝関節の動き・安定に関わる多くの筋肉に弱化が認められました。この不安定な状態が、動作に伴う痛みやつっぱり感を出していると考えられました。
また、朝のこわばりといった症状から腰椎のDJD(退行性変性…加齢に伴う変性がより進んでいる状態)も疑われ、骨盤の機能障害や筋バランスを改善させながら、腰椎に運動性を付けて行く必要がありました。
施術内容としては、腰椎・骨盤に対してアジャストメントを行いながら、弱化筋を改善させるようAKを交えたアプローチを行ったのですが、腰椎のDJD対策としてマッケンジーエクササイズを加えました。
初回検査時に弱かった筋肉は2回目来院時には改善していましたが、痛みはまだ残っていました。継続的に施術を行った結果、5回目来院時には腰痛は朝に出るも常にではなくなり、下肢の症状は改善されておりました。7回目来院時には腰痛も気にならなくなったとのことでした。
コメント
この患者さんの場合、下肢痛といっても坐骨神経痛のような痛みの出方ではなく、動きに伴う各部位の痛みといった症状だったため、筋バランスが崩れていることが想定されました。実際に筋力検査を行ったところ、股関節や膝関節の安定に関わる複数の筋肉に弱化が認められました。
初回のアプローチで筋力は改善し、2回目来院時に検査した際も安定していたのですが、痛みといった症状はまだ残っていました。このようなパターンはよくあるのですが、筋力が回復したといっても筋肉が使えるようになった訳ではありません。弱い筋肉をカバーするような筋肉の使い方が塗り替わってはじめて、その筋肉が使えるようになったと言えるのです。
筋肉の使い方を脳に覚え込ませるには時間がかかります。この患者さんの場合は5回目来院時に下肢痛が改善していたことから、1か月ほどかかったということが分かります。
腰痛に関しては、年齢や朝のこわばりといった症状から腰椎のDJD(退行性変性)を考慮してマッケンジーエクササイズを選択したのですが、ご自宅でも行って頂いたことで良い効果を引き出せたと考えております。
その後も間隔を空けながらみさせて頂いており、6週間を超える間隔でも症状は安定していたのですが、1年ほどしてから症状が少し戻ってきています。DJDの進行も考慮しないといけないのですが、その頃から筋肉の弱化が戻ってくる傾向にありました。施術後は楽になって頂いておりますが、前よりも治療間隔が空いてしまっていることも要因の一つと考えております。年齢に伴う変化と症状との兼ね合いを考慮しながら、適切な治療間隔を見極めて行く必要があると感じております。
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