症例のポイント:食欲不振といった胃腸のトラブルもAK(アプライド・キネシオロジー)や神経学からチェックすると、今まで分からなかったことが見えてきます。
このような患者さんでした
20代男性。(長距離を走るアスリートの方です)
症状
- 10日ほど前から消化不良、食欲不振を感じている。
(練習の疲れもあってか食欲が徐々に落ちてきている) - 普段は問題ないが、練習がきつい時は過去にも同様の症状が出たことがある。
- 点滴をしてもらったが、薬を飲みたくないとのことで当院に来院。
- 腰や背中に痛みといった症状はない。
- 手足が冷たい、寝ても疲れがとれない、腹部膨満、下痢といった体調の変化がある。
経過
筋骨格系の症状ではないので、体調について詳しく伺ってゆくと、上記のような変化が出ていました。
内臓の働きのベースとなる神経系の問題を考慮して対光反射における瞳孔の収縮度合をチェックしたところ、交感神経が亢進している傾向が見られました。副腎(交感神経終末から放出される神経伝達物質と同作用のホルモンを放出します…)に関わる縫工筋が両側弱いことからも、自律神経系のアンバランスが疑われ、副交感神経が低下していることで胃腸の働きが落ちているのでは?と推測されました。また、腸腰筋(体幹の筋肉の一つで、脚を前に押し出します…)にも両側弱化がみられ、回盲弁(小腸と大腸とを隔てる弁機能…)に関わる部位や副腎の反射のポイントを触れてもらうことで筋力が回復することから、回盲弁症候群や副腎の機能も関係していることが疑われました。
胃腸の問題への直接的なアプローチとしては回盲弁を調整し、副交感神経を刺激するために耳に温風を当てています。加えて、副腎に関わる反射のポイントへの刺激や、胸腰移行部へのアジャストメントを行うことで、腸腰筋・縫工筋の筋力も改善しています。自律神経や回盲弁症候群に関するアドバイスを行って初回は終了とし、様子をみることとしました。
2回目来院時に伺ったところ、食欲も改善し、腹部膨満も落ち着いているとのことでした。対光反射ではまだ交感神経の亢進が疑われましたが、回盲弁のチェックは問題なく、腸腰筋・縫工筋も安定していることから、競技に関わる筋骨格系の問題からの調整を行い、しばらく様子をみてもらうこととしました。
コメント
この患者さんの症状は筋骨格系の視点だけでは対応が難しいと言えます。ですが、AKや神経学の考え方から検査して行くと、色々なことが見えてくるのです。特に自律神経系のアンバランスは、胃腸の問題だけでなく疲労や様々な症状を引き起こしますので、今後も注目して行かなければならないチェックポイントです。また、この患者さんは、腹部に膨満感が出たころから脚を上げづらく感じていたとのことでした。腸腰筋が弱かったこと、その筋肉が回盲弁や副腎と関連していたことから、胃腸を含めた内臓の問題が筋肉に影響を及ぼす(まさにAKの考え方です…)ことを実感して頂けたのですが、アスリートの方だからこそ、より鋭敏にその変化を感じられたのではないでしょうか。
このような内臓の問題と筋力の変化は他の部位でも見られます。筋バランスを安定させるためには、背骨や骨盤だけでなく、内臓の働きも考慮しながら、もちろん神経系も含めてトータルに判断することが必要なのです。
この患者さんの場合、慢性の症状ではありませんし、当院への来院によって食欲が改善したとは言い切れませんが、改善に向かう方向づけは出来ております。症状の改善はご自身の身体がするものです。その方向づけをする…、改善に向かう力が足りない場合はそれを手助けする…これができるのがカイロプラクティックであり、AKなのです。
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