カイロこまば通信 第136回
【2016.05.30 発行】
テーマ:筋肉を伸ばしたり、縮めたりしてから筋力検査…
今回も前回に引き続き、条件を加えた筋力検査について、ご紹介します。
筋力検査を行ったところ問題なく力が出ている筋肉で、ストレッチした後、或は収縮させた後に筋力検査を行い、筋力が変化しているかをチェックします。この条件が加わっただけで筋力が弱化する(しばらくして再度筋力検査を行うと筋力は戻っている、一時的な筋力低下です…)となると、それは正常な筋肉とは言えません。関連する問題が潜んでいることを示唆しているのです。
アプライド・キネシオロジー(以下、AK…)では、前者を筋ストレッチ反応、後者をストレイン・カウンターストレインとして区別しています。筋肉自体に短縮や過緊張といった変化が生じている場合が多いですし、弱化筋の協力筋や拮抗筋といった関連筋にみられやすいといった傾向があります。
もう少し詳しくご紹介して行きます。まずは、筋ストレッチ反応から。
この検査では注意点があります。筋肉に対して長く強くストレッチをかけてしまうと一時的な収縮抑制がかかってしまいますから正確な結果が得られません。長く強いストレッチをかけてはいけないのですが、またぐ関節の最大可動域近くまで持って行く必要がありますので、加減が大切になります。この問題は弱い筋肉の反対の作用の筋肉(拮抗筋。弱い・強いのアンバランスが作られています…)に多く見られるのですが、AKではトリガーポイント(第129回で紹介しましたが、関連痛を引き起こす筋肉内部にできる硬結です…)が存在するか筋肉と筋膜の癒着(筋肉のスムーズな収縮が妨げられます…)が存在するかといった点から調整して行きます。トリガーポイントに対しては虚血圧迫法を用いて血流を改善させながら硬結を取り除いて行きますし、筋膜の癒着に対しては筋膜リリースといったテクニックを用いて筋膜と筋線維とがスムーズに動けるよう調整します。
次はストレイン・カウンターストレインです。
この問題は、筋肉を持続的に収縮させた後に生じます。この問題をイメージして頂きやすい例としてよくお話するのは、草むしり後の腰痛で、腸腰筋のトラブルです。しゃがんだ姿勢で長時間作業していると腸腰筋(腰椎前面から大腿骨近位に付着する筋肉で、腰の安定に関わります…)が縮こまった状態でかたまってしまい、立とうとしてもスムーズに伸びてこなくなります。それが腰椎に負担をかけるので、腰痛の原因となるのです。ストレイン・カウンターストレインの問題からくる腰痛は、本当に多いと思います。筋肉が短縮している状態は関節の可動域に制限を加えますので、トラブルが生じやすいのです。
ちなみに、ストレイン・カウンターストレイン自体はカイロプラクティックのテクニックではなく、オステオパシーのテクニックです。他の治療院でもよく行われているのですが、AKでは創始者であるグッドハードDCによって筋力検査を用いた検出方法が確立されています。調整方法は、短縮している筋肉の圧痛部位を確認しながら他動的に筋肉を収縮させ、前面の筋肉か背面の筋肉かで分かれますが呼吸期を合わせながら押圧を加えます。改善したかは、再度筋肉を収縮させた後に筋力検査を行って確認するのですが、急性腰痛の方でストレイン・カウンターストレインの問題が潜んでいた場合、屈んでいた腰が起こせるようになって頂けることは多いです。
筋ストレッチ反応にしろ、ストレイン・カウンターストレインにしろ、普通に筋力検査をしただけでは分からない問題です。もちろん、まずは弱化筋を確認してそれらを改善させることが大切なのですが、そのような弱化筋をもとに協力筋や拮抗筋をチェックして行くことも大事ですし、弱化筋がなくても症状や問診(痛みの出た動作は?・・・etc)に応じてチェックすることも大事です。単に弱いだけでなく、強くても問題が潜んでいる可能性がある…それを見つけ出して改善させることが症状改善のために大切ですし、それできるのがAKなのです。
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