カイロこまば通信 第143回
【2016.12.19 発行】
テーマ:たんぱく質のお話の続きです…
前回はたんぱく質が三大栄養素であって、必須アミノ酸をバランスよく摂取することの大切さをご紹介しました。今回は、たんぱく質の摂りすぎの問題点…と言いますか、消化・吸収がしっかりできないと…というお話です。
たんぱく質の消化・吸収の流れを整理しましょう。たんぱく質はまず胃で分泌される胃液で分解されます。胃液には、胃酸(pH1-2の強酸…)とペプシノーゲン、粘液などが含まれていて、強酸下でペプシノーゲンが活性化され、たんぱく質分解酵素のペプシンとなります。そのペプシン、更には膵液中のトリプシンなどによってたんぱく質はより細かなペプチド(アミノ酸の集合体…)に分解されるのですが、小腸から吸収される際はアミノ酸まで分解されている必要があります(ごく細かなペプチドのまま吸収されることも…)。体内に吸収されたアミノ酸は、たんぱく質に再合成されて細胞やホルモン、酵素、血液の成分などに利用されます。
では、吸収されなかったたんぱく質はどうなってしまうでしょう。たんぱく質がしっかりと吸収されずに大腸に送られると、悪玉菌の餌になって腸内環境の悪化を招きます(焼肉を食べすぎた翌日の便の状態とか、おならの臭いが参考になるかも…)。ビタミンを合成したり、弱酸性にして(乳酸や酢酸といった酸を作ることで…)悪玉菌の増殖を抑えたり腸の蠕動運動を促進したりといったことを善玉菌が行っているため、悪玉菌よりも善玉菌の方が多くないといけないのですが、それが崩れると…といった怖い話はよく聞かれますよね。その辺りはテレビやインターネットに委ねて、ここでは腸脳相関からリスクに関わるお話をしたいと思います。
消化管に関わる症状(胃もたれ、便秘、腹痛…)で色々な検査をしても問題が出てこないものは機能性消化管疾患(機能性ディスペプシア…)と呼ばれますが、腹部の症状だけでなく、眠れない、意欲がない、頭痛といった全身的な症状を訴えるケースが多いそうです。つまり、脳側の関与が疑われるのです。消化管内表面の細胞が受けた刺激は迷走神経を介して脳幹部に伝えられます。消化管内の環境が荒れると過剰な神経刺激を脳にあげることになり、脳の過剰反応が引き起こされ、結果、様々な体調不良に関わるリスクが高まるのです。腸内環境を整える、善玉菌を増やすことは、脳、更には全身に優しいことなのです。
少し話がそれたのでたんぱく質に戻します。先ほどは吸収されなかった時のお話ですが、次は吸収された後の問題です。吸収されたアミノ酸は体内で再構築されて筋肉などの生体を構成する成分になりますので、体重を気にされる方は食べ過ぎ注意です。一方、再合成されずに残ったアミノ酸は有機酸とアンモニアに分解されますが、有機酸はエネルギー源として利用されるのに対し、アンモニアは肝臓で尿素に転換されて尿中に排泄されます。つまり、肝臓に負荷をかける要素となるのです。ちなみに、肝臓はアミノ酸から血漿たんぱく(アルブミンやフィブリノーゲンなど)を合成したりと、たんぱく質代謝にとってとても重要な器官です。解毒作用も行っていますので、負荷をかけすぎるのは避けたいところです。
このように書くと、たんぱく質を摂らない方が良いのでは…と思われるかもしれませんが、たんぱく質は体調を整えるために欠かせません(何となく…といった体調不良に関わっている可能性がありますし、体重を気にするあまり必要なたんぱく質を摂取せず体内での酵素生成や免疫系に影響が出ているとしたら本末転倒です…)。大切なことは生鮮食品から良質なたんぱく質をバランスよく摂取することですし、その先の工程を意識して腸内環境を整える食品を多く摂取したり、肝臓に負荷をかけないようインスタント食品や加工食品を減らしたりといったことを心掛けることを忘れないようにしましょう(こちらを普段から意識しておいて、たまに美味しいものをガッツリ食べるという方が好ましいのですが…)。この時期は忘年会や新年会で、食べ過ぎ・飲み過ぎとなりやすい時期ですので、ぜひ。
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