カイロこまば通信 第60回
【2010.1.25 発行】
テーマ:関節を動かさないとどうなってしまうのか…
今回は関節を動かさないとどうなってしまうのか…という点をお話します。
関節やその周囲には、腱、靭帯、関節包といった結合組織や関節軟骨があります。それらは、各種細胞や、その細胞が作り出すコラーゲンやプロテオグリカンなどの基質から生成されています。組織毎に存在する基質やその構成比率、細胞に差があることで、張力を発揮したり、固定力を強めたりとその組織に合った役割を発揮できるのです。また、基質は細胞の働きをコントロールする役割も果たします。関節に正常な負荷がかかると、基質に力学的、電気的、化学的なシグナルが生まれます。そのシグナルが細胞に伝わることで合成や変性といった細胞活動を生じさせるのです。
では、関節に負荷がかからなくなるとどうなるでしょう…。関節の使用が極端に減少した期間が続くと、基質の構成が変化し、細胞のコントロール機能に影響します。組織の構成が変わり、本来の役割が発揮できなくなってしまうのです。
軟骨を例にしてみましょう。関節固定や運動不足による負荷減少は、軟骨細胞の働きを変化させ、基質中のプロテオグリカンの合成を抑制します(組織中のプロテオグリカン含有量が減少することに…)。その状態が長く続くと、軟骨の水分含有量を増加させ軟骨が軟らかく薄くなってしまうのです(衝撃や過度な負荷で損傷しやすくなります…)。もちろん加齢でも細胞の反応を低下させますが、その変化(変性…)を早めることにもつながります。
とはいえ、激しい運動を日常的に行っても、それだけが原因で変性が早まることはありません。負荷や運動の欠如による基質の分解の方が、関節の変性を早める原因になるのです。だからこそ、関節の固定は問題を引き起こしやすいと言えるのです。関節を固定すると、関節を安定させる周囲の靭帯は軟化します。でも、関節の動きには制限が生じます。関節内の癒着(結合組織の基質内に生じる変化から…)や筋肉の短縮が生じているからです。骨折等では、筋肉が短縮しにくいよう、関節が癒着しにくいよう、配慮したポジションでギブス固定しますが、影響は少なからずあります。固定や床上安静の期間は短く(とはいえ骨折の場合、骨がつかないと困りますが…)、その他の関節や色々な筋肉はよく動かしておくことが大切です。
ただ、関節固定による変化の多くはある程度の期間をかければ戻ります。が、それ以上になるともう戻らないという境界もあります。この辺りについては次回に委ねます(残り少なくなってきたので…)が、固定後の運動に対するちょっとした注意点をご紹介しておきます。先ほども書きましたが関節を固定すると関節を保護している靭帯は軟化します。また、年をとると組織の強度が低下して衝撃に対して弱くなりますし、損傷からの回復も長くかかります。骨は意外と入れ替わりが早いのですが、軟骨の場合そうは行きません。入れ替わりは遅く、修復も限定的なのです。だからこそ、固定後に運動する際は、関節軟骨が損傷しないよう注意が必要なのです。「この程度なら大丈夫…」といった思い込みは危険です。まずは普段より数段落としたレベルからはじめて行きましょう(もちろん、徐々に段階を上げて行かなければなりません…)。ご年配の方は特にこの点に注意して(意識しておくことが大切です!)、まずはご近所の散歩やプールで歩くといったレベルから始めてください(慣れてきたら、徐々に上げて行くことも忘れずに!)。
次回は関節を動かすという点をカイロプラクティックの視点も含めてお話したいと思います(まだ構想をねっていないので、若干変わるかもしれませんが…)。
※バックナンバー一覧はこちら↓