カイロこまば通信 第72回
【2011.1.31 発行】
テーマ:過去の外傷がその後にも影響を及ぼしている?
さて、今年一回目のテーマは過去の骨折や手術といった外傷歴がその後も身体に影響を及ぼしている可能性があるということについてです。
骨折の場合、骨のつき具合で影響が残ってしまうということはまれにありますが、今回は"見た目上完治しているのに…"といった場合についてです。なので、過去の外傷がその部分に記憶として残っていて全身の筋バランスに影響を残したままになっているというイメージで捉えてもらえれば良いかもしれません(必ず起きる訳ではありませんが…)。
昨年10月にこの問題に関する検査・治療テクニック"インジュリー・リコール・テクニック"(以下、IRT…)についてのセミナーが開催され、それに参加してきたのですが、とても興味深い内容でした。このテクニックは当院でも用いられているAK(アプライド・キネシオロジー)のテクニックの一つで、AKの創始者である故Dr.グッドハートD.C.が体系化させたものではなく、弟子に当たるDr.シュミットD.C.(現在AKではNo.1と言われている方です…)によって確立されたものです。そのような大御所が昨年10月に来日され、日本では初めとなるセミナーが開催されることになったので、"これはぜひ!"と思って参加してきた次第です。
イントロダクションはここまでで、本題に入ります。
ではなぜ過去の外傷が影響してしまうのでしょう。骨折や手術痕、むち打ちといった身体に加えられた外傷は、そこにある侵害受容器(神経の末端にあり、痛みに反応します…)から求心性刺激を脳にあげたり、首をすくめる手をひっこめるといった反射を引き起こしたり、自律神経に働きかけて血管を収縮させて大量出血を抑えようとします(これらが神経系を介して行われます…)。これらは防衛反応ですから、はじめはとても有益です。ただ、これが後々は神経系の混乱を引き起こし、(小脳で制御される)各筋肉の張力に変化が生じてアンバランスなままになるといった影響を残しかねません。
もう少し詳しく説明すると、姿勢は関節や筋肉から緊張状態を伝える固有感覚刺激を脳に連続して送ることでキープされます。本来の姿勢を維持するために予期される神経刺激の連続発火が、このような外傷部位からの侵害刺激によって消失することで、姿勢や筋力がアンバランスな状態のままキープされてしまう可能性が生じるのです(十数年前の過去の外傷がアンバランスの原因になっていることも…)。
このような問題をどのように検出し、改善させて行くかという点ですが、過去の外傷部位にある機械受容器(触覚、圧覚等に反応…)に刺激を加えることで侵害刺激をブロックさせ、筋力に変化が出るかを確認します(AKは筋力の変化を重視します…)。つまり、弱化筋が過去の損傷部位に刺激を加えることで筋力が改善する場合は、そこにアプローチが必要という流れです(強い筋肉を用いて変化を見る方法もあります…)。
施術は、外傷部位の機械受容器に刺激を加えて、足関節か上部頚椎にリセットするような動きを加えるだけです。Dr.シュミットは、その効果を筋力の改善だけでなく、関節可動域の向上、片脚立ちでの不安定さ軽減といった側面から評価されていました。私自身、このテクニックをどのように組み込むかという点でまだ試行錯誤している状況ではありますが、自分の施術の幅を広げてくれるテクニックと確信しております。
なお、Dr.シュミットは、外傷に対して「新しいものであれ過去のものであれIRTが必要」と話され、問診にて外傷歴をしっかりと聞くことが大切と力説されていました。今後は、問診にてこの点も充実させて行きたいと考えております。ぜひ、ご協力ください。
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