カイロこまば通信 第81回
【2011.10.31 発行】
テーマ:膝に痛みを感じたら早めにバランスを整えましょう!
今回は膝の痛みに関するお話です。
膝は変形性関節症(変性関節疾患、以下DJDと表記…)といった慢性的な痛みを引き起こしやすい部位と言えます。年配の女性の場合、膝が痛いとこの疾患が疑われますが、膝を酷使するスポーツをしていた方などは若くてもDJDになることがあります(もちろん程度はありますが…)。
DJDは過去の外傷や反復的なストレス、先天性の形成異常、代謝性疾患(通風や糖尿病など…)、肥満、老化といった別の要因から二次的に生じることが多いです。関節軟骨の変形や減少、軟骨の下にある骨の変形、関節周囲の組織の肥厚といった変化を伴うのですが、軟骨に本来ある修復力を超えて損傷が加わることで変性が進行して行きます。慢性化してしまうとそれが治るということは難しく、どの療法でも症状を改善させながら進行を遅らせるといった治療になるかと思います。
このように書くととても怖いのですが、変性は年をとることでいつかは訪れるものです。なので、加齢とともに高まるリスクをなるべく減らして行く、つまり損傷が起こり難いようにして行くことが予防となります。変性はどの関節にも起こりえるのですが、膝に多く起こります。その理由を考えて、対処して行くことが求められるのです。
では、膝に起こりやすい理由はなんでしょう。
根本的にはヒトが二足歩行になって膝にかかる負担が増えたことと言えるでしょう。でも、DJDになる方もいればならない方もいます。上述した主要因があるかないかという個人差もありますが、膝が十分に負荷を吸収できる機能を確保できているかというところが問題となってきます。
膝には関節面が内側と外側にあります。その関節面の間に半月板が入っています。歩いたりする際に膝にかかる衝撃をその二つの半月板や関節軟骨がバランスよく吸収したり、関節にある遊び(ガチガチの関節だと衝撃を逃がすことが出来ません。関節には骨を動かすような大きな動きではなく、関節内で少しずれる、離れるといったちょっとした自由度があり、それを遊びと言います…)で逃がしたりします。このような膝の機能が損なわれる原因となるのが、靭帯の損傷といった外傷(不安定になるだけでなく、浮腫や瘢痕等で関節の遊びを損います…)、膝の運動や安定に関わる筋肉の筋力低下(関節面に沿った動きにも影響します…)、X脚やO脚といった構造的な傾きです。
X脚・O脚は膝の内側・外側に均等にかかるべき負荷を偏らせていますので、変性のリスクを高めます。とは言っても、X脚やO脚だと必ずDJDになってしまうという訳ではありません(成長に伴ってそれに適合するように関節包や靭帯、筋肉といった周辺組織が形成されてきていますので、外傷等で生じた膝のトラブルとは安定性は異なります…)。プラスして別の要素が加わることで症状が引き起こされますから、前述したリスクに思い当たる方は、膝の機能を損なわないよう、安定性をキープして行くことが必要なのです。
膝は前十字靭帯、後十字靭帯、内側・外側側副靭帯といった靭帯と関節包が関節を直接的にガードしています。でも、これらを意識して強めることは出来ません。なので、膝の前後、内外側からの安定性に関わる筋肉が弱くなっていないか…、骨盤の傾きなどからどちらかの膝に負荷がかかっていないか…をチェックして行くことが予防の一環となります。X脚やO脚の方でも、上記の項目が大丈夫であればさほど気にすることはないかと思います(もちろん、継続的にチェックすることが望ましいです…)。
ただ、膝に痛みが出ているような場合は、何らかのトラブルがある可能性が高いです。筋力をチェックし、弱い筋肉は働かせる…過緊張している筋肉はストレッチをかける、関節自体には遊びを保つよう動きをつけるといった対策を早め早めに行ってゆく必要があります。慢性症状になるとなかなか簡単ではない膝の痛み…痛みが出るような場合は早め早めの対応が望まれます。
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