カイロこまば通信 第91回
【2012.8.27 発行】
テーマ:"筋バランスを整える"とはどういうこと?…
今回のテーマは当院のホームページやカイロこまば通信でよく出てくる筋バランスを整えるという言葉の意味についてです。
当院で用いているアプライド・キネシオロジーというテクニックは筋力検査をよく用いるのですが、バランスが整うということを弱化筋の改善を通して実感して頂けるというところから、この言葉を用いています。ただ、筋肉だけを見ている訳ではありません。その辺りの事をお話して行きたいと思います。
まずは、私がよく用いる筋バランスという言葉をイメージして頂くため、筋バランスが崩れている状態を考えたいと思います。
前後左右から紐(筋肉を表しています…)で引っ張りながらバランスをとって立っている棒(骨格を表しています…)があるとして、その一方向からの張力が落ちている状態をイメージしてください。それですぐに倒れるということはないとしても、他の3方向ではバランスを調整するために紐を引く力の微調整が求められます(それは筋肉でいったら過緊張を生む要因になります…)し、少し傾いてしまうかもしれません(背骨や骨盤の傾きにつながります…)。このような状態として実際によく見かけられるのは、骨盤周囲の筋群における筋バランスの崩れです。
立位において、骨盤は固定された脚の上でバランスをとっていますが、それは脚から骨盤に付着する前後左右の筋肉の働きによるものです。ただ、骨盤の横からの安定に関わる中殿筋という筋肉が弱くなっているケースはよく見られます。この筋肉が弱くなると骨盤が左右に傾くのですが、その傾きを今度は背骨が補正しようとしますので、背骨の動きや安定に関わる脊柱起立筋や腰方形筋といった筋肉に緊張や左右差を引き起こします。
この他にも色々なケースが考えられますが、姿勢を維持する筋肉の弱化はバランスを保つために他の筋肉の緊張を引き起こし、更には別の筋肉の弱化を引き起こすというように、ループして行きます。そのループを断ち切ることを"筋バランスを整える"という言葉で表現しています。筋バランスを整えるということは、結局は骨格のバランスを整えることでもありますし、骨格のバランスが崩れないよう予防することでもあるのです。
では、「弱い筋肉を鍛えれば筋バランス、更には骨格のバランスを整えることができるということ?」と思われるかもしれません。確かに、筋トレを頑張ることで姿勢が良くなってきたり、腰痛や肩こりが改善されたりといった良い効果は出てくると思います。ただ、筋肉の弱化は関節の機能障害を生みますし、関節の機能障害は筋肉の慢性的な弱化を引き起こします。また、筋肉自体が弱い訳ではなく、筋肉が働ける状態にありながら神経的に抑制されていて十分な力が発揮できない状態になっていることもあります(といいますか、多いです…)。
色々な場面で筋肉と骨格とを分けて説明されることが多いかもしれませんが(マッサージは筋肉中心で関節は考慮しませんし、逆に一般的なカイロプラクティックだと骨格中心になりがちです…)、実際のところは相互に影響し合っていますから、分けて論じるべきではないと私自身は考えます。鍛える時も同じです。筋肉を鍛えるのであれば関節の機能障害を改善させておくことが望ましいですし、どの筋肉が弱くなっているのかを把握しておいた方が効果的です。
ちなみに、筋バランスを整えるという表現を使っていますが、筋肉だけを見ている訳ではありません。弱化している筋肉を支配する神経(脊柱の各レベルから出てくる末梢神経です…)や筋肉の付着部(骨格筋は関節をまたいで骨を動かすことが目的なので、その筋肉の起始・停止部や走行が重要です…)を考慮しながら、背骨や骨盤、更には四肢や頭蓋といった骨格各部の関節機能障害を探っているのです。関節の機能障害に対しては必要な方向に刺激を加えながら改善させるのですが、それによって筋力がすぐに回復することも多いです(筋肉が神経的に抑制されている状態の場合によく見られます…)。とはいっても、なかなか回復しない場合もあります。そのような場合は、筋肉の反射点を使ったり、筋肉を活性化させるようエクササイズをお願いしたりしています。
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