カイロこまば通信 第138回
【2016.07.25 発行】
テーマ:胸郭について…
今回は胸郭に関するお話です。
胸郭とは胸部で肺を保護している骨格群を言います。背面から側面は背骨(第1~12胸椎…)と12対の肋骨、前面は肋骨から連絡する肋軟骨を介して付着する胸骨で構成されています。上部と下部に入口があり、それぞれ胸郭上口、胸郭下口と言いますが、特に胸郭下口は横隔膜で覆われています。また、肋骨の間には肋間筋という筋肉がはっていて(それも内肋間筋と外肋間筋に分かれています…)、更には肋骨挙筋といった筋肉もあります(表面は大きな筋肉が覆っていますが、ここでは省略します…)。
これらの筋肉は、呼吸に関わります。胸郭は息を吸うときに持ち上がるように膨らみ(胸郭上部は持ち上がる動きが大きく、胸郭下部は外に広がる動きが大きくなっています…)、息を吐く時に縮みます。そうすることで、十分に酸素を取り込めるように、酸素を吐き出せるように働きます。ゆっくりとした呼吸においては、息を吸うときに横隔膜や外肋間筋が収縮して上記のような動きが起こります。肋骨挙筋といった筋肉も補助的な役割で収縮しますが、大きな呼吸が必要な時はより胸郭を持ち上げる必要があるため、胸郭より上位にある斜角筋や胸鎖乳突筋(首や頭から肋骨に付着しています…)が収縮します。
これは前にも紹介しているのですが、斜角筋や胸鎖乳突筋といった筋肉が普段の呼吸でも関わってしまう呼吸パターンに陥ることがあります。呼吸は常に動いているものですから、これらの筋肉が普段の呼吸に関わることで過緊張や筋疲労を生み、首・肩の痛み、こりといった症状を引き起こすこともあるのです。
胸郭の動きをもう一つ紹介しておきますと、身体を横にひねるような動作ではひねった側の肋骨は後方に回旋し、反対側の肋骨は前方に回旋します。つまり、右回旋では、右肋骨は後方回旋し、左肋骨は前方回旋します。
さて、今回この胸郭をテーマにしたのは、背骨の弯曲に肋骨が大きく関わってくるからです。背骨に側弯があるとします。背骨を構成している椎骨は純粋に横に傾くことは出来ずに必ず回旋を伴いますので、肋骨にも上述したような回旋の動きが加わります。側弯によって上下の肋骨間に左右差が出るのに合わせて、円柱状である胸郭にねじれも生じてくるのです。この状態は肋骨の動きを悪くしますし、そうすると胸郭全体の動きに影響してきます。つまり、酸素と二酸化炭素の交換に影響が出てくることが危惧されるのです。
なお、背骨の側弯は子供の頃に検査される突発性側弯症が主に思い出されるかと思いますが、普段の生活の中でも生じます。例えば、背骨の土台である骨盤に傾きがある(背骨が代償するよう弯曲を描きます…)、横を向く姿勢習慣がある、片側ばかりに重い荷物を背負うといった場合に生じ易いといえますが、他にもたくさん要因はあると思います。
側弯や胸郭のねじれが慢性化すると、その状態に応じて組織が適合してきます。靭帯の長さが短くなったり、関節周囲を囲む結合組織が硬くなったり、筋肉が短縮したりと様々な変化が生じて固まります。このようなねじれがなくても胸郭は年齢に伴って硬くなって可動性が減少してきますから、それをより助長してしまうことになりかねないのです。
では、どうすべきか…という点が大切なのですが、簡単に言えば背骨・骨盤の傾きをなるべくつくらない、胸郭全体の可動性をキープできるよう運動をすることが必要です。ピラティスやヨガといった運動を行うのも良いと思います。日常から深呼吸をする、ストレッチを行うといった習慣を付けるのも良いと思います。座り方や机の位置を見直すといった環境面からチェックすることも効果的です。それに加えてでも構いません。予防の観点から骨盤や背骨の傾き、筋バランスをチェックさせて頂ければ幸いです。
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