カイロこまば通信 第152回
【2017.09.25 発行】
テーマ:肩関節の痛みに関わるポイント…
今回は肩関節の痛みに関わるポイントとして、肩関節でのインピンジメント(挟み込み)症候群をベースにお話します。
では、インピンジメント症候群とは何でしょうか。
関節唇という関節の内部構造が衝突するもの(インターナルインピンジメント…)と、肩関節を覆っている滑液包や回旋腱板(ローテーター・カフ…)といわれる筋肉(腱…)が骨構造に挟み込まれるもの(エクスターナルインピンジメント或は肩峰下インピンジメント…)と大きく2種類に分かれるのですが、どちらも上腕骨と肩甲骨の協調された動作が崩れ、挟み込みが反復されることで損傷が生じ、痛みとなります(急性期は炎症の徴候がありますが、慢性化するとさほど炎症の徴候は見られません…)。表層にある大きな筋肉(アウターマッスル…)と深層にある筋肉(インナーマッスル…)との協調性が崩れることで痛みが生じるというケースはよくあるのですが、肩関節でもよく見られる問題です(表層にある三角筋と、回旋腱板を構成する棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋という4つの筋肉との協調運動が崩れて…)。
もう少し詳しくお話します。
肩関節は球関節です。回旋腱板を構成する4つの筋肉は球の形をした上腕骨頭(上腕骨の近位端…)を覆うように付着して、お椀の形をした肩甲骨関節窩に引き寄せ、動きの中心点となる球の中心をお椀の中でずれないよう調整してきちんと球を回転させる役割を担っています。それに対し、表層の筋肉は球よりも外側に付着していて、その筋肉だけで引っ張ると、球は回転せずにお椀にぶつかってしまうことになります。このような表層の筋肉は大きくて強い力を産み出しますので、回旋腱板がきちんと機能しないとインピンジメントが引き起こされることになるのです。
ただ、回旋腱板を構成する4つの筋肉は、個々には腕を外側に引き上げる働き(棘上筋…)、腕を外側に回す働き(棘下筋、小円筋…)、腕を内側に回す働き(肩甲下筋…)と上腕骨側と肩甲骨側の付着する部位によって働きが違います。それらが同期をとって働くことで上腕骨頭を球の中心に保持させているのですが、個々で見ると反対の作用の筋肉もありますから、他要因でそれらの筋に抑制や弱化が生じると引っ張り合いが崩れてしまうのです(外旋筋である棘下筋や小円筋が過緊張して、内旋筋である肩甲下筋が抑制されるといったことはよくあります…)。
表層の筋肉と回旋腱板が協調して動くことでインピンジメントは防がれているのですが、腕を動かす時にこのような動きを意識して個々の筋肉を動かしている人なんていません。自動で調節されているのです。その自動調節が崩れる要因は様々です。肩に負荷をかけるスポーツ、腕を持ち上げる作業の多い職業といった分かりやすいものもありますが、いつの間にか崩れているものとしては、肩甲骨のポジションや動きがあります(姿勢の悪さといったものも、その背景に…)。肩甲骨が崩れれば回旋腱板を構成する4つの筋肉の機能に影響しますし、その先にある上腕骨の動きに変化が出るのは必然です。
いつの間にか崩れているポイントのもう一つは、肩関節を動かす表層の筋肉に負荷をかけ、過緊張や短縮が引き起こされることです。大胸筋ばかり過度に鍛えたり、習慣的に手で重いもの持ったりといったことも要因となりえます。
これらについてもう少しお話して行きたいのですが、スペースの都合上、次回に委ねます。
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