『生化学的レベルでの炎症…痛み』
【カイロこまば通信】

カイロこまば通信は、2006年11月から当院入口で配布してきたニュースレターです。様々なテーマで健康情報を発信していますので、ぜひご覧ください。順次掲載して行きます!

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テーマ:生化学的レベルでの炎症…痛み

今回からは、生化学的レベルでの炎症というテーマで何回かお話して行きます。初回は、組織レベルでの痛みの機序と、そこに関わるケミカルメディエーターをご紹介します。今後は、栄養学的な視点を加えて行く予定ですので、ご期待ください。

今回は、生化学的レベルでの炎症と題し、導入としてそのレベルでの痛みについてお話します。次回以降では、食事といった栄養学的な視点も含めて行きたいと考えています。

まずは身体各部の末梢レベルでの痛みについてです。

痛みを最もイメージしやすいのは転んで怪我をした時でしょうか。皮膚が擦りむけて血が出ると痛いですよね。その際、何が起きているかと言うと、外傷によって組織を壊すような刺激(以降、侵害刺激と言います…)が加わることで、痛みを伝える神経の末端にある侵害受容器が興奮して脳に向けて信号を送ります。そのような直接的な刺激だけでなく、損傷した組織から生成される様々な発痛物質が侵害受容器の細胞膜に付着する(それぞれの物質ごとの受容体があってそこにつきます…)ことで引き起こされる痛みもあります。

その中には、侵害受容器を直接興奮させるものだけでなく、感受性を高めて発痛を増強させるもの、血管に作用して局所発熱、腫脹、発赤といった炎症反応を起こして痛みを増強させるものもあります。それらには、カリウムイオンや水素イオンといった電解質と、ケミカルメディエーターと言われる細胞から細胞への情報伝達に使われる化学物質があります。特に炎症反応は、このケミカルメディエーターに制御されていて、炎症を促進する炎症性メディエーターと炎症を抑える抗炎症性メディエーターとのバランスによって炎症の鎮静と組織の修復が促されています。ちなみに、侵害受容器は筋肉や関節、骨膜と至る所にありますから、色々な部位に起因して痛みは生じます

ケガによる炎症をイメージしてもらうためのイラスト

このような侵害受容器レベルでの痛みの感知は、繰り返し同様の刺激が加わると次第に反応が大きくなり(感作と言います…)、神経が反応するまでの閾値が低くなってくる傾向にあります。これが曲者でして、炎症が持続すると、閾値が下がることで今までであれば興奮しない程度の弱い刺激でも神経が興奮し、痛みとして脳に伝えてしまうのです。この状態が痛覚過敏なのですが、末梢性だけでなく脊髄の中(後角…)で次のニューロンに受け渡すレベルでも生じています。

痛覚過敏と似ているのですが、アロディニア(異痛症…)というものもあって、痛みの持続に関わります。これは、触れる、圧迫するといった通常では痛みと認識しない非侵害刺激で痛みを感じてしまう感覚異常のことで、私たちの臨床上よくみられます。例えばぎっくり腰のような急性腰痛の患者さんを検査する際、腰椎下部(骨盤の中心にある仙骨という骨のすぐ上くらいが特に多い…)を触れただけで「痛い!」とおっしゃられる方は非常に多いです。触覚のはずなのに痛覚として脳に伝わっている状態なのです。

カイロプラクティックや整体に来られる患者さんの多くは、何かの動作で腰を痛めたとか姿勢が悪いためか慢性的な腰痛・肩こりがあるというような力学的な問題から生じる痛み・こりで来院されます(病的な問題から生じる痛みを抱えている方は、まず病院に行かれると思います…)。ただ、組織のレベルでは、力学的な負荷がかかって組織が損傷している、あるいは損傷していたために炎症性のメディエーターが放出されて神経感作が起こり、痛覚過敏やアロディニアが生じている可能性が高いのです。

痛みは、力学的な問題だけで生じている訳ではなく、必ず力学的、生化学的、心理学的(痛みは情動との関連が強い…)な関わりがあるものなのです。痛みは、ぎっくり腰でも、こりからくるものでも、炎症性メディエーターが関与しているのです。痛みが出た部位では、炎症性メディエーターを介して過敏に反応するよう変化してしまっている訳ですから(それが組織の修復にとっても大切なのです…)、大切なことはそこに過度な負荷が加わらないよう導くこと(バランスを改善させながら…)、更に重要なポイントはその状態をキープして行くことなのです(施術させて頂いてすぐに痛みがなくなることが理想なのですが、組織レベルではこのような変化が生じていることをご理解頂けると助かります…)

次回からは、炎症性・抗炎症性に関わる栄養学的な視点をお話して行きます(現時点での予定ですが…)

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