カイロこまば通信 第163回
【2018.08.31 発行】
テーマ:生化学的レベルでの炎症(第5回)…ミネラル
栄養素の観点からの生化学的レベルでの炎症についてですが、今回のミネラルを最後のテーマとします(他にも気になる点はありますが、長くなってしまったのでここらで…)。
今回注目するミネラルは、カリウムとマグネシウムです。
ナトリウムとカルシウムは摂取に気を付けるようテレビや雑誌で目にすることが多いと思いますが、それらに相関性があるのに忘れられがちなミネラルがカリウムとマグネシウムです。でも、こちらも注意が必要です。
まずはカリウムですが、細胞内に多く含まれていますので、外傷等で組織(細胞…)が破壊されると周囲に排出されます。(生化学的レベルでの炎症の)初回でも書いたのですが、放出されたカリウムイオンは発痛物質として作用しますので組織の損傷・治癒過程の中では炎症を促進します。
とはいっても、それは組織が損傷した時の話で、カリウム自体の摂取が不足しがちな現代日本の食生活では積極的に摂取すべきミネラルと言えます。カリウムの欠乏は軽度であれば症状として現れることはありませんが、ナトリウムとバランスを摂って摂取すること(Na/K比をなるべく低くする…)が高血圧の予防に大切なだけでなく、筋力低下やひきつるといった筋肉の機能障害にも関わってくるため、アプライド・キネシオロジスト(AKの施術者…)としても、あまり不足して欲しくない栄養素と言えます。
次はマグネシウムです。体内では、消化・吸収・代謝等様々な生化学反応が行われていますが、その働きを促進するために酵素というものが存在しています。2000種類以上あると言われていますが、そのうち300種類ほどの酵素には活性化にマグネシウムが必要となるのです。マグネシウムが関わる働きとしては、たんぱく質の合成、エネルギー代謝、骨や歯の形成、神経情報の伝達、体温や血圧の調整といったものがあり、このことからも生きて行くために欠かせない栄養素と言えます。
マグネシウム不足の影響は広範囲に及ぶのですが、炎症反応においても大きく関わります。サブスタンスPという痛覚の神経伝達物質の濃度を上昇させ、それが神経原生炎症を惹起することで免疫細胞や血小板を刺激して炎症性メディエーターを放出します。更にマグネシウム欠乏が神経系全般の過興奮を引き起こし、末梢と中枢の侵害受容器の活動を亢進させる可能性があるのです。
アメリカではマグネシウム摂取不足が叫ばれているのですが、日本ではさほど意識されていません(厚生労働省のサイトでも「通常の食事では摂りすぎることはありません」となっています…)。ただ、供給源となる野菜に含まれるマグネシウムの量が土壌の疲弊により減っている(肥料のせい…)と言われたり、カルシウムとマグネシウムの摂取には適切な比率(2:1…)があるのですがそれを無視してカルシウムばかり摂る(サプリメントで…)ことでマグネシウムの吸収阻害が引き起こされたりといったこともあります。サプリメントで一気に摂取する方法もありますが、将来のことを考えるとまずはマグネシウムを意識した食材選びといった工夫を始めることが大切です(カルシウムも忘れずに…)。ちなみにカリウムもマグネシウムも下痢をすると不足することがあります。慢性的に軟便の方はより意識して摂取するよう心掛けてはいかがでしょうか。
カリウムとマグネシウムについて書いてきましたが、必須ミネラルと言われるものは鉄やリン、亜鉛、ヨウ素など他にもたくさんあります。それぞれに作用がありますので、不足しないよう意識して摂取する必要があるのですが、摂りすぎると体調を崩しかねません。なので、できるだけ食材から摂るよう心掛けましょう。そうすれば健康な方であれば摂りすぎるリスクはほぼないと言えます(偏った食べ過ぎには注意が必要ですが…)。それぞれに摂取基準はありますが、数値に捕らわれるのは得策ではありません。まずは普段食べない食材に目を向け(魚介類や海藻を食べていますか? 野菜だって色々な種類がありますよ! 普段食べない旬の素材もお勧めです…)、積極的に摂るようにして行きましょう。それが、体内での生化学レベルでの炎症を抑えることにもつながるのです。
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