カイロこまば通信 第61回
【2010.2.22 発行】
テーマ:関節に動きをつける…どのように?
今回は『関節を動かさないとどうなってしまうのか…』というテーマの続きです。
固定等で関節を動かさないと関節内に組織的な変化が起こり、変性を早めてしまいかねないというところまでお話しました。今回は、関節に動きをつける意味とその方法についてお話します。
まずは運動が関節に与える効果をいくつかご紹介します。
- 過緊張した組織のストレッチや癒着のひきはがしによる可動域増加
- 運動の筋ポンプ作用による浮腫の改善や老廃物や痛みを引き起こす物質の除去
- 椎間板及び軟骨への栄養供給の増加
- 基質の組織構造を改善させることで瘢痕の減少や強度向上につながる
関節は本来動くもの…その動きがあってこそ組織本来の働きが活性化され、自然な状態をキープしたり、固定によるマイナス面を除去したりということが可能になるのです。ただ、靭帯を損傷した場合(もちろん損傷の度合いにもよりますが…)、しっかりとした強度を獲得するまでには数ヶ月から1年くらいかかりますし、即手術が必要なものもあります。関節軟骨も損傷がひどいと治癒は困難です。というように、何でも運動すれば治るという訳ではないですし、その運動によって逆に損傷をひどくする場合もあります。
このように書くと運動は下手にしない方が…という気持ちになるかもしれません。ただ、荷重をかけたり運動をしたりといったことで生じる刺激が、組織を正常に保ちます。適度な運動をサボると損傷した部分の周囲にある正常な組織までも弱くなってしまうのです。無理をしなさいということではありません。まずは軽い散歩から…とか、先生に指示された運動を…と言う様に、安全な範囲から開始し、徐々に増やして行けば良いのです。
次に関節の可動域について説明します(下図参照)。関節には、能動的な可動域(自分の筋肉で動かせる範囲…)とそれを超える受動的可動域(筋肉は使わず他の人が動かせる範囲…)、そしてその先に傍生理的空間と呼ばれる可動域があります(この先は解剖学的な限界、つまり骨折等につながります…)。その傍生理的空間にたどり着くには受動可動域の最終にある関節のエンドフィールと呼ばれる抵抗感をほんの少し超えることが必要です。
一般に関節への治療というと、リハビリテーションで行われるような他動的な運動で可動域を上げて行く方法がイメージされるのではないでしょうか。カイロプラクティックではどうかというと、大きく2種類、モビリゼーションとアジャストメントがあります。どちらも関節のあそび(このあそびがないと本来の関節面に沿った動きが阻害されてしまいます…)を回復させることを目的としています。モビリゼーションは受動可動域内で低速な力で動きをつけて行く方法で、リハビリテーションと似たアプローチです。一方のアジャストメントは、高速低振幅のテクニックで先ほどの傍生理的空間までの動きをつけることを目的としています。
関節に瞬発的な力を加えることでロックしている関節に間隙をあけ、組織の癒着や筋肉の過緊張を改善させ、神経受容器を刺激します。通常のストレッチやモビリゼーションでは届かない傍生理的範囲に働きかけることで、関節のあそびを回復させるだけでなく、神経系の正常化を引き起こし、筋力の回復や痛みの改善をもたらします(カイロプラクティックが得意とするところがここなのです…)。
骨折で関節を固定していた…病気で寝ていた…という状況が続くと、筋力の低下を心配される方は多いですよね。でも、本来の状態に戻りにくいのは関節です。リハビリはそのために必要なのです。とはいえ、リハビリでなかなか症状が改善してこないこともあるかもしれません。そのような場合は傍生理的空間までの動きが必要なのかもしれません。
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