カイロこまば通信 第150回
【2017.07.31 発行】
テーマ:加齢に伴う重心の取り方(第3回:エクササイズ…)
加齢に伴う重心の取り方の3回目、今回はエクササイズに関するお話です。
バランス機能の低下を予防し、遅延させる対策をとることはQOLを向上させるためにも有意義です。バランストレーニングといっても様々です。まずは感覚運動を鍛えましょう。とは言っても、これまで紹介してきたとおり、足がしっかりと機能できることが大切であり、その上でバランストレーニングを行った方が効果的と言えるのではないでしょうか。
感覚運動のトレーニングには3つの要素があります。重心コントロールと身のこなし方、重複感覚です。重心コントロールは支持基盤を変化させながら移動する重心への対応、身のこなし方は少々の揺れは足で吸収するが大きくなると腰を使って吸収するというように下肢全体の使い方、重複感覚は1つの感覚が使えない場合に他の感覚系を頼るよう仕向けるといった点をトレーニングすることがポイントとなります。
ただ、これらを効果的にトレーニングして行くことはなかなか大変です。
片脚立ちをしたりバランスボールに座ったり目を瞑ってバランスボードに乗ったりといった方法が浮かびますが、先ほどお話しした通り、まずは足の機能性を向上させることから始めてみてはいかがでしょうか(重心コントロールにも身のこなし方にも足は重要な役割を果たしますし、重複感覚という点からも足底からあがってくる求心性刺激は大切です…)。逆に言うと、足を無視してバランスのトレーニングだけを行っても、効果的? といった疑問が残ります。
足の機能性という点でまずチェックして頂きたいのが、足趾を使えているか?です。
足趾は手の指のように細かな動きはできませんし、日常で意識して使う機会はまずないのではないでしょうか。更にいうと、普段靴で固定されてしまっているのではないでしょうか。その結果、趾を動かす筋肉がさぼって上手く使えないようになっているかもしれません。例えば、グー(足趾を全部曲げる…)、チョキ(母趾だけ反らす…)、パー(趾を全部広げるように…)はできますか? 見た目で足趾が反っていませんか? 外反母趾の傾向はありませんか? どれも足趾が上手く使えなくなっている可能性を示唆しているのです。
次は足関節です。ふくらはぎの筋肉が硬くなって足を反らすことができなくなっているかもしれません(反らす筋肉が弱化している可能性も…)。反れているように見えても足趾を過度に反らして出来ているように見せているだけの時もあります。足趾を曲げた状態からも反らすことは出来ますか? 他にはペタペタ歩きになっていると言われたことはありませんか? これも本来踵から着地して足趾(母趾…)から抜けるといった重心移動が上手くできていないことを示しています。年齢に伴ってこのような傾向が出てきたと感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、重心のコントロール方式が変わってきたことを示しているとも言えるのです。
では、どのようなエクササイズから始めれば良いのでしょうか。まずは足趾を使いましょう。とは言ってもはじめは上手く使えません。足趾を個々に動かしてあげたり、手の指を足趾の間に入れて趾をひらいてあげたりといった準備運動をしてください。そのうえでグー・チョキ・パーといった動きを数回繰り返してください。それと、タオルギャザーといった運動もおすすめです。詳細はインターネットで検索して頂きたいのですが、床に置いたタオルを足趾(なるべく足趾の腹で…)で引き寄せます。
もう一つ紹介したいのは、バランスボードを使った足関節の運動です。円盤上のバランスボードは、立ってバランスのトレーニングをするための物ではありますが、机の下に置いて座った状態で足をのせ(靴を脱いだ方が効果的…)色々な方向に動かすといった足のトレーニング器具としても利用できます。足関節での反る・伸ばすといった運動、だけでなく足趾を使ってタオルギャザーのような動きを行う、趾でボードを押すことで足趾屈筋群のトレーニングを行う等色々な運動を作業しながら行うことができるのでお勧めです。
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