カイロこまば通信 第69回
【2010.10.25 発行】
テーマ:末梢神経について…(第2回:上肢編パート1)
今回から末梢神経の上肢(腕や手)編です。
この部分で問題となるのは、やはり肩や腕の痛み、しびれでしょう。それらの部位を支配する神経は下部頚椎や上部胸椎の各レベルから出てくる脊髄神経が束なって伸びて来ます。だからこそ、首についても少し触れておきたいと思います。ということで、上肢編は脊髄神経から腕神経叢までと、腕の末梢まで行く3本の神経とに分けてお話します。
まずは脊髄神経から腕神経叢("わんしんけいそう"と読みます…)まで。
神経叢という言葉は聞きなれないと思いますが、複数の神経が集まったり枝分かれしながら網目状の構造をしているところを言います。腕神経叢は首から出る脊髄神経(第5から第8頚神経、第1胸神経の前枝…)が首の前の部分で集まって上・中・下という3つの神経幹を作り、そこからまた枝分かれや合流をして外側、後、内側という3つの神経束を作っています(ざっくりですが…)。
腕神経叢は概ね、鎖骨の上から腕の付け根付近に位置し、そこから腕に行くメインの3本の神経や枝分かれした個々の神経が上肢の皮膚や筋肉に届き、各種の感覚や筋肉の運動を司っています。また、腕神経叢は腕に行くメインの動静脈と並走しているため、腕神経叢の絞扼は同時に動静脈の圧迫から来る問題と大きな関わりがあります。胸郭出口症候群と言われる腕の痛みやしびれを引き起こす症状を引き起こしかねないのです。
この腕神経叢は、通るルートから3つの狭窄ポイントがあります。
一番目は首前面にある斜角筋の隙間(斜角筋症候群…)で、二番目は鎖骨と肋骨の隙間(肋鎖症候群…)、三番目は小胸筋という筋肉と肋骨との隙間(過外転症候群…)です。これらの隙間が狭くなると、腕神経叢が狭窄されて支配領域の感覚・運動が阻害されたり、動静脈が圧迫されて血流が低下したりすることで様々な問題が生じます。
また、腕神経叢は胸郭出口症候群以外にも、例えばテニス肘、手首や指の痛みとの関わりも強いと言えます。というのは、手や肘の感覚情報(痛覚だけでなく、触覚や固有感覚なども…)は神経を介して脳に伝えられますが、その伝導路上で絞扼があると、その伝えられる情報に影響を及ぼします。より強い痛みにつながることもあるのです。手や肘といった各部の症状を軽減させるためにも、頚部や腕神経叢にある絞扼を解放させることが大切なのです。
腕神経叢はその後正中神経、橈骨神経、尺骨神経という3本の神経に分かれます。ただ、上腕(よく二の腕と呼ばれますが…)にある筋肉や手を除いた腕のほとんどの感覚(背面の感覚は橈骨神経由来です…)は腕神経叢から分かれた細い神経が支配しています。その点からも腕神経叢にアプローチする意義は大きいのです。
正中神経・橈骨神経・尺骨神経のお話は次回、上肢編パート2で詳しく書きたいと思っています(毎度のことですがスペースが足りなくなってしまいました…ゴメンなさい…)。
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