カイロこまば通信 第71回
【2010.12.20 発行】
テーマ:末梢神経について…(第4回:下肢編)
今回は末梢神経のお話の最終回、下肢(脚・足)編です。
下肢に痛みやしびれがあると、坐骨神経痛という言葉をよく耳にすると思います。例えば腰の下部に椎間板ヘルニアができて神経根(脊髄各レベルから前枝〔運動神経根〕、後枝〔感覚神経根〕として枝分かれしたものです。それが合わさって脊髄神経となります…)を圧迫した場合、末梢神経である坐骨神経に沿って痛みが広がります。それが坐骨神経痛です。
ただ、原因は椎間板ヘルニアだけではありません。変形性関節症による骨棘が神経を刺激することもありますし、脊柱管狭窄症の場合もあります。これらはMRIで写るものなので、病院で診断が可能です。ただ、末梢神経絞扼障害のように背骨から出たところで起きる問題もあります。その場合、病院ではなかなか判断しにくいのではないでしょうか(仙腸関節症候群、椎間板症候群、中殿筋のトリガーポイントといったものも、坐骨神経痛様に下肢に痛みが広がりますし…)。
当院ではこの問題にどのように対するかというと、問診や神経学検査・整形学検査といった病院でも行う検査でおおまかな状態を捉え、腰や骨盤、股関節、膝・足を動かしたり、各部の筋肉をチェックしたりしながら絞り込んで行きます。ただ、絞り込むといってもその他を捨ててしまう訳ではありません。カイロプラクティックは全身を評価して、筋骨格系に関わる機能障害を改善して行くことが本質ですし、きっかけは一つでもそれをかばうために他の問題を引き起こし、相互に影響しあって治りを悪くしてしまう…そんな負のスパイラルに陥ることがよくあるからです。
例えばヘルニアが坐骨神経痛の原因だとしても、痛みを避けるようにして身体のバランスを崩し、股関節を動かす筋肉(特に梨状筋…)に過緊張や弱化を引き起こしてしまう。その結果、末梢神経の絞扼を引き起こし、坐骨神経がとても過敏な状態になってしまうことがあります(膝や足の機能障害もまた同様です…)。だからこそ、神経ルート全体を考慮して神経の過敏な状態を改善させて行くことが症状をより早く改善させるために必要なのです。
末梢神経のチェックが何故必要かについて長々と書いてしまいました。何となくでも構わないのですが、ご理解頂けたら嬉しいです。ここからは下肢の末梢神経の紹介に戻ります(スペースが少なくなってしまったので簡単に…)。
下肢の神経支配をおおまかに説明すると、腰神経叢由来の末梢神経(主に大腿神経や外側大腿皮神経、閉鎖神経…)が太腿の背面以外と脛の内側を支配し、仙骨神経叢由来の末梢神経(後大腿皮神経、坐骨神経〔脛骨神経・総腓骨神経に分かれます〕など…)が太腿の背面と脛の外側やふくらはぎ、足を支配しています。
絞扼部位としては、腰神経叢由来の末梢神経は鼡径部(脚の付け根の前側…)が多く、坐骨神経は殿部(お尻にある梨状筋という筋肉の下のすきまから神経が出てきますので、そこで絞扼されることが多いです…)や膝の裏付近、足根管症候群と言われる足首付近があげられます。
下肢の症状がなかなか治らない方は、このような神経ルートを考慮したチェックを一度されてみては如何でしょうか。
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